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クインシー 私には投票権がありませんが、今度の選挙すごい選挙でしたね。
安曇野・・ 貴方に選挙権があったら、誰に投票していましたか。
クインシー やっぱり、小泉さんが好きです。はっきりしていて良かったんではないですか。先生は誰に入れたんですか。
安曇野

それはナ・イ・シ・ョ。この20年間、投票行動は一貫してブレませんが、もうそろそろ改宗しようかと思っています。

クインシー マレーシアも小選挙区制の政権選択選挙で、毎回与党連合と野党連合が激突しています。マレーシアは5年に1度選挙があるんです。前の選挙は2003年でした。政党のシンボルマークを描いた旗や候補者の写真が街中に貼りめぐらされ、散乱し、選挙一色のお祭り騒ぎになります。
安曇野 比例区なんていう敗者復活はないんですね。すっきりとした小選挙区制ですか。
クインシー マレーシアの選挙戦は、政党のシンボルマークで戦うので、日本みたいな「連呼」ではなく、重要なのは「フラッグ」なんです。与党連合の中心はUMNO(統一マレー国民組織)で、日本でいえば自民党。マレーシア政治の骨格をなすマレー人の政党です。
安曇野 そうですね。マレーシアは、多民族社会ですから、民族別に政党が構成されていて、与党連合は、UMNOを中心にMCA(華人協会)、MIC(インド人会議)など10を超える政党で構成されているんですね。
クインシー UMNOが結成されたのは、1946年で、マレーシアの独立からこの政党を中心にマレーシアは動き、現在もあります。
安曇野 マレーシア国家の仕組みは、宗主国イギリスとUMNOとの調整の中で成立し、今日に至っていますからね。マラヤ共産党の武装蜂起、シンガポールの独立などの歴史的エポックはありますが、今日の与党連合に組する三人種組織の調整の上にマレーシアの戦後60年があるんですね。
クインシー マハティールを軸にしたこの20年間で、ルックイースト政策、2050年に向け新経済政策をすすめることによって、あれよあれよという間にマレーシアは農業国から工業国に変わってきました。
 
安曇野・・ で、貴方からみて、今度の選挙のどこが面白かったんですか。
クインシー そりゃーあ、小泉劇場をたっぷり堪能しました。小選挙区制というシステムが社会や政治に何をもたらすのか、ということがはっきり見えてきました。誰を選ぶのではなく、何を選ぶのかが、はっきりした選挙で、私の友達も皆、選挙に行ったみたいです。
   
安曇野 成程ね、若い人もずいぶん関心を持っていたんですね。私も今回の選挙で「小選挙区制」という選挙制度が、この国に定着したな、と思いました。細川政権から10年経って、やっと定着したな、という感じ。基本的には、アメリカ型社会へと日本社会を改造しはじめて、20年。もう戻れないほどに、日本社会はアメリカ化してきました。今回の選挙は若い人が大量に参画した結果の表現したよね。
クインシー  でも、社会格差がますますひろがり、住みにくい社会に突入していくって社民党の福島さんも言ってましたよね。
安曇野 「勝ち組政治」をやめさせようって、言ってましたよね。護憲ということは良く判りますが、所得の目減り、高齢化社会の到来と人口減など安定成熟社会と呼ばれる時代に入っているわけで、高度経済成長はもう望めないんですよね。自民党の抵抗派と言われる人の頭には、国債の発行を増やしても公共投資をして景気を上げていけば、という考え方に似ているところがありますよね。
クインシー

ホリエモンを応援していた大仁田厚さんが「改革をすすめて、昔のよき時代に戻そう」と訴えていましたが、今回の選挙は、「改革」のなんたるかも判らない改革派が散見されることですね。

安曇野 そうですね。年俸2500万円、新幹線のグリーン車が乗り放題、という26歳の国会議員も登場しましたし。話を戻しますが、このグローバル化した社会、旧来の日本的共同体の仕組に戻そうとすることは無理です。この十年間、日本という国、日本という社会の構造はガラガラと変わってきましたよね。私は、優勝劣負の仕組みの全てを否定するものではありませんが、福島さんがいう国家のありようは別の方法で探していかなければならないと思います。その点、マレーシアは民族、宗教上の配慮がよくされて、絶妙なバランスの上に国が成立していますよね。
クインシー でも先生、前々回のこのHPで、日本の伝統、日本人の心の底流について先生にお話いただきましたが、今の先生のお話は、その日本的なものの崩壊を当然なこととしておられるのでは?
安曇野 それはそれ、これはこれ。って識者は言いますが、私は伝統というのは、時代の中で新しく創られるものと思っています。例えば、祇園祭。応仁の乱の頃、都が乱れて、病に多くの人が亡くなった。祇園祭は、その病弊を除くためにはじまったわけで、今の祇園祭とは全く異なったものですよ。500年続く伝統行事と言われていますが、その目的、鉾の数から掛け物、稚児は全ての山車に乗って、厄病除の祈りをしていたのですから・・・・・・。
クインシー 日本の将来に希望が持てなくなって、ホリエモン的生き方に憧れて、ホリエモン的合理主義が、改革の方向だということで投票行動につながっているんですね。
安曇野 なかなかの分析ですね。私もそう思います。「くの一」とか「刺客」と言われ、小泉劇場に浮かれたかの様に、大勢は総括していますが、私のこの傾向は、今回に限り、一時的なものだとは思いません。いわゆる新保守義という方向に舵が切られたということだと思います。
クインシー そうですね。民主党は、前回と大差のない票を獲得しているんですね。それでも自民党が圧勝した要因は、都市部の若い層の投票の行動ということですね。
 
安曇野 繰り返しますが、大半の方々はこの現象を一時的なことだと思っているんですね。マジックとかシングル・イシューという選挙戦術とか、小泉劇場に浮かれた結果起きたクレイジーな姿だと思っていらっしゃる。私は違うと思うんです。
クインシー 私もそう思います。
安曇野・・ この10年間、20年間すすめられてきた「日本のアメリカ化」という経済政策、政治構造の改造がほぼ完成し、国民がそれに合意した特に若者層の意思表示がこの選挙結果だと思っている。
クインシー 小泉劇場の一幕。小泉マジックに皆が踊らされた一過性の結果だというのが識者・ジャーナリスト・政治家の意見ですよね。
安曇野

確かに小選挙区制ですから、オセロのように黒があっという間に白に変わってしまうことはあります。が、今回の選挙結果は、正直いって小泉マジックに皆がひっかかったと総括すると、時代の流れ、時代認識を根本から誤ることになるのではないでしょうか。

クインシー 日本人の心の奥まで読みきれません。私にも、もう少し判りやすく解読してしていただけますか。
安曇野 はいはい。敬愛するクインシーのお頼みとあれば。堺屋太一さんが、今度の選挙について面白いことを言っておられました。今度の選挙は、日本社会の「職縁」の影響が消えた選挙だったと、確か言われていました。
クインシー どういうことですか。
 
安曇野 ええ。家系、家族という意味で血縁は判りますね。政治家でも二世議員、三世議員が増えて、政治家という職業の世襲についての論議はありますが、これは特異な例にすぎません。だって、子供におじいちゃんの名前を聞いてはっきり答えられる子供は3割くらいですよ。その一世代上の曾おじいさんの名前(まあ、4人いますから憶えようもありませんが)を言える人って皆無ですよ。
クインシー そうですね。私はおばあちゃん子でしたから、母親より密接な関係でしたが。
安曇野 日本人のすまいが、団地、マンションに変わってきた頃から、1970年代に入ってからだと思いますが、大きく変わりました。食生活が欧米化して、生活環境が大きく変わり、大家族制とは異なるの家族関係が形成され、意識も随分変わりました。が、その中でも「会社」の中での人間関係は旧来のように持続してきたんですね。
クインシー 慰安旅行、ボーリング大会、新年会に忘年会。
安曇野・・ よく知っていますね。そうです、核家族化がすすむ中でも「会社」の家族主義的システムは90年代に入るまで持続していましたからね。企業戦士と呼ばれる人々が、バブルを支えました。運命共同体としての「会社」、家を省みず働き続けて過労死した人も多かった。それに、企業内組合がこのシステムを補完していました。
クインシー それが崩れ始めた理由は、どこに・・・・・・。
安曇野

それは、年功序列の賃金が能力給に変わり、生涯雇用という関係が壊れたことによります。それと、時代のIT化・グローバル化に伴う社会構造の変化と、誰もがコンピュータに対面しながら仕事をすすめるというコミュニケーションの変化、職場環境が大きく変わってきたということも大きな要因です。部門採算性、業務のアウトソーシング、パート雇用、派遣社員の増大など、この10年間で「職縁」をめぐる環境は大きく変わりました。

クインシー 日本もドラスティックに変わってきているんですね。
安曇野 マレーシアも貿易立国です。いずれマレーシアも同じ歩みをすすめることになるのではないでしょうか。――それで、繰り返しになりますが、給与の年俸制などが導入され、給与が生活給あるいは生涯雇用という性格が薄れるにしたがって、会社への帰属意識が薄くなり、経営者もそれを期待しなくなった。今度当選した自民党で経済アナリストの佐藤ゆかりさんは、給与の目減りの補充は、それぞれのサラリーマンが「株」でも買って充当すれば良いのでは、と提言されていますが、彼女の目指す日本社会は完全にアメリカに準拠した社会なのですね。
クインシー だいたい判りましたが、それと今回の選挙結果と、どう結びついているのでしょうか。
 
安曇野 複合民族社会としてのマレーシアは、それぞれの民族の絆が強く、この社会構造が変わらない限り強固なものとして存在し続けるでしょうけど、日本は、欧米的スタイル、核家族化を通して「地縁」、「血縁」の繋がりが非常に薄くなり、旧来の共同体が崩れてきました。企業経営のアメリカ化によって最後の「職縁」も切れたということをここまで、お話してきましたが、次にグローバルという価値の世界的共有化の中で、日本が変わらざるを得ないということをどう理解するかも大切です。
クインシー 難しいですね。でも、そのグローバル化って、先生の言葉で言えば、アメリカ化ということですよね。
安曇野 アメリカンスタンダードについて、どう思うかということなのですが、今回の選挙は、日本人がそれを是とし、「可」としたというのが私の総括です。これまで、選挙を通して、日本の方向が変えられるなんて思ってなかった若い層が800万人選挙に参加して、日本の方向を決定した、というのが私の理解です。ですから、それが良いか悪いかは別にして若い日本人が選んだ新しい方向、新しい道です。
   
クインシー 今度の選挙の立役者は、ホリエモンなんですよね。私もそうでしたが、ホリエモン的世界をこの国の若者は是としているんですね。それから小泉さんが「殺されてもいい」と言ったことは決定的でしたね。